「未来の月探査にゲーム開発技術で挑戦しよう!」
日本の宇宙科学研究者の中で検討が進められている月面の縦孔探査計画「UZUME」における科学探査を
「遠隔操作ロボット」で行う際の課題解決を目指します。
JAXA ISAS/太陽系科学研究系 春山 純一

将来の人類活動領域の拡大のためにも、また科学的に重要な知見を得るためにも、月面に訪れたいところは多くあります。 しかし、それらの多くには、様々な点から探査が難しいと言われる場所があります。 その最たる場所が、月の地下空洞です。月の地下空洞については、その入口となる縦孔が、日本の月探査機「かぐや」によって2009年に発見されました。 月の地下空洞は、放射線や微小隕石から免れ温度も安定するなどという利点があり、月で最も魅力あふれる基地建設候補地です。 しかし、月の縦孔、そしてその先の地下空洞は、いまだかつて人類が挑戦したことのない探査対象です。 我々研究者は、UZUME計画の名の下に、探査の方法を検討し始めていますが、まだまだ未解決の問題が多々あります。 どうやって遠い月と交信するのか、月の長く冷たい夜をどう過ごすのか、深い縦孔にどう降りるのか、暗く未知の地下空洞をいかに探査するのか?

そんな中、JAXAとKLab社の共催で、今回の「月探査ハッカソン」が企画されました。 この機会に、より多くの方々に、月探査に興味を興味を持って頂くとともに、実際にハッカソンに参加いただく皆さんには、月探査に立ちはだかる様々な困難を問題の設定から始め、多様なアイデア、アプローチにより、その困難の突破を試みていただきたいと思います。 日本の、そして世界の月探査は、今やJAXAといった国家の宇宙機関や、一部限られた研究者だけによるものでない、新しい時代を迎えようとしています。 是非、ふるって「月探査ハッカソン」に御参加下さい。 尚、イベント当日は、会場に、もちろん私もいたいと思います。

KLab(株) CTO 安井 真伸

KLabは今ゲームを作っていますが、会社としてのそもそもの始まりは、「インターネットにつながる携帯電話」という技術のフロンティアに挑戦したことから始まっています。 それから今に続くまで、エンジニアが持つ「新しいものを生み出したい」というチャレンジがKLabを引っ張ってきました。 そして今回、月というフロンティアに、日本の宇宙開発をリードするJAXAと共催でチャレンジする機会を企画できたことをうれしく思います。

ゲームを作るには、数学やアルゴリズム、コンピュータサイエンス、ネットワークやハードウェアの技術など、とても広い知識とノウハウと実践が必要となってきます。 KLabでは、多くのエンジニアがそれぞれの得意技術を突き詰め、ゲーム開発に活かしています。 さらに、ゲーム開発にとどまらず、様々な技術領域に興味を持ち、自らチャレンジするエンジニアも多くいます。

今回のハッカソンは、そんな彼らのチャレンジから生まれた企画です。 世界的なIT企業が宇宙開発にチャレンジしている昨今、我々もゲームで培った幅広い技術で宇宙開発に貢献できるのではないか?という、一見無謀な挑戦ですが、 参加者の皆さんと一緒に、ユニークなアプローチで課題解決に取り組み、ハッカソンを楽しめることを期待しています。


Entry
ハッカソンで挑戦する課題の詳細
メインテーマ
月-地球での、ロボットの高精度遠隔操縦の実現
月-地球間では、往復でおよそ2.4秒ほどの通信の遅延が発生します。また、通信速度も例えば「かぐや」では10Mbps程度となり、大きく制約されます。もちろん、CPU・メモリなどのコンピュータ資源も大きく制約されます。本ハッカソンでは、そういったミニマムな条件下でロボットを地球から遠隔操縦して、月探査を行うためのアイディアとそのプロトタイプ実装を目指します。
サブテーマ
・通信の制約された中での遠隔操縦用VR(Virtual Reality:仮想現実)環境の構築と管理
※遅延にどう対応するかと、その際のデータ量をどう削減するかが大きな課題となると考えています。そのため以下のようなアプローチがあるのではないかと考えています。
  ・VR用の周辺環境3Dモデルのセンシング、マッピング
  ・周辺環境データの通信データ構造
  ・ゲームエンジンの活用
参考となる技術:360度カメラ、Kinnect、Tango、VR関連、データ圧縮アルゴリズム、ストリーミングプロトコル、3Dモデル圧縮など
・ロボットの自律性強化
※月での実地での試行錯誤を行うことはできません。そのため、簡単に使えるシミュレーション環境が必要となってきます。シミュレータでは以下のようなことができるとよいと考えています。
  ・月面作業シミュレータの構築や、ネットワークを介してのテスト
  ・協働作業によるロボットのテストや操縦データの集積とそれによる学習
  ・ネットワークゲーム技術の応用
参考となる技術:Gazebo、ROS、物理シミュレーション、オンラインゲームの通信、機械学習・AIなど
参加者は以上の課題のいずれか、または独自に考えた課題に対して、チーム・個人で取り組んでいただきます。実際に自分が月探査を計画するとしたらどういったことを考える必要があるか?科学的想像力を発揮してシナリオとその課題を考え、技術的な課題の解決に挑戦してみましょう。

制作物の例

・周辺環境の3Dモデルなどを高遅延低帯域ネットワークで送る圧縮方法やプロトコルの実装
・周辺環境の3Dモデルのセンシングやマッピング技術の開発
・ロボットソフトウェアや遠隔操縦ロボットのシミュレーターなどのゲームエンジン連携やネットワーク化
・操縦データの学習の仕組み開発
・月面探査のシミュレーションや制御、チェックのネットワーク上協働環境の開発(ネットワークゲーム技術の応用など)

課題の背景

月の縦孔とは?
月の縦孔は、2009年に日本の月探査機SELENE「かぐや」の月面観測データにより、 日本人が人類史上初めて発見した孔です。 縦孔は、直径・深さともに数10m~100mに及ぶ巨大なもので、現在3つが確認されています。 縦孔の底には広い地下空洞があり、また横孔が続いている可能性も示唆されています。 この縦孔内部は、放射線や隕石から守られ、且つ温度が安定するため、今後人類が月面基地の建設を行う際の有望な候補地と考えられています。 さらに、月の地質学的な探査や、月の歴史や成因を探るためなど、科学的にも高い関心を持たれています。 そのために、縦孔の詳細を探る科学探査が重要となってきます。

ハッカソンとは?
ハッカソンはもともと、オープンソースプロジェクトなどの課題解決の目的で、開発者が集まり集中的に作業するイベントから始まりました。 その歴史にならい、本ハッカソンでも月面の縦孔探査という先進的プロジェクトの実現のため、その一部分の技術的課題の解決に取り組んでいきます。

なぜゲーム?
現在ゲーム開発技術は、ソフトウェア・ハードウェア両面の様々な先端技術が、UnityやUnrealEngineなどのゲームエンジンを中心に統合され、医療や建築、教育など、ゲーム以外の分野にも応用されつつあります。 また、リアルタイムの対戦を支えるネットワーク技術やデータの処理・分析技術、AIやバーチャルリアリティなど、広い分野の技術が惜しみなく投入される、技術的に非常に活発な分野でもあります。 今回のテーマである「遠隔操作ロボット」は、上記のゲーム開発技術が活用できそうな対象でもあると考え、今回のハッカソンを企画しました。
開催概要
日時
2017/11/11(土)~12(日)  ※2日間
各日10:00~19:00
2日目は、懇親会を実施予定です
※尚、スケジュールは一部変更になる場合があります
会場
KLab株式会社(東京都港区六本木6‐10‐1六本木ヒルズ森タワー)

参加費用
学生
無料
※交通費 :国内交通費全額支給(後日振込)
※宿泊場所:遠方にお住まいの方で、宿泊をご希望の方はお申し出ください。事前手配させて頂きます
(前泊・後泊が必要となる方は、参加決定の場合に別途詳細についてご案内いたします)
社会人
無料
※交通費および宿泊費は全額自己負担にてご参加をお願いいたします

当日のスケジュール
11/11(土)
09:30  開場
10:00  イントロダクション、開会
10:30~ 作業
19:00  終了

11/12(日)
09:30  開場
10:00~ 作業
17:00  発表
18:00  審査結果発表&表彰
19:00~ 懇親会
※尚、スケジュールは一部変更になる場合があります

開催までのスケジュールイメージ
10/18(水)
イベント告知、エントリー受付開始

10/18(水)~10/30(月)13:00まで
エントリー受付期間

10/31(火)~11/02(木)
審査ならびに抽選、結果連絡 ※参加決定の方、ならびに参加をお見送りさせて頂いた方、それぞれの皆さまにメールにてご連絡予定です

11/06(月)~11/07(火)
参加意志確認(メール、電話等)

11/08(水)~11/10(金)
参加確定者へのリマインドメール送信、問い合わせ対応

11/11(土)~11/12(日)
ハッカソンイベント当日 ※2日間


ハッカソンのルール
・無線LANは、運営側で用意いたします
・各種機材の持ち込み可。ただし、運営者は破損紛失盗難等の責任を負いかねます。各自で適切に管理してください
・事前準備は可。ただし、当日作業が無いということがないように、あくまで準備ということでご認識ください
・他者の権利(著作権等)を侵害する行為はお止めください
・公序良俗に反するものはNGといたします
・製作物の著作権は製作者に帰属します。また、製作物をJAXA等にて活用する場合は、運営事務局を介さず製作者との個別相談とします

当日の持ち物
・開発用のPC
・本ハッカソンにおいて必要になると思われる各種機材等
(下記運営側で用意する予定の各種機材は数が限られますので、必要に応じて皆さまにてそれぞれ事前にご用意ください)

運営側で用意する機材(予定)
Unity
Oculus Rift x2
HTC Vive x2
Tobii Eye Tracker x1
Microsoft HoloLens x1
Sony Smart Eye Glass x1
Raspberry Pi x2
KLab PackDrop(高遅延高エラー率ネットワークエミュレータ)
半田ごてなど電子工作工具
その他検討中

成果物についての考え方
成果物の評価について
今回のテーマである「月探査での遠隔操作ロボットにおける課題解決」に対して、2日間で完成品を作ることは非常に難しいと考えています。 そのため、参加者の皆様にはアイディアの中核を実証するために最低限の部分が実際に動くプロトタイプの実装を目指していただきたいと思います。 成果物の表彰のための評価としては、アイディアの独自性・面白さ・実際の探査における有効性と、その概念実証をどこまで動作するものとして提示できたかといった点を重視させていただきます。
成果物の権利について
本ハッカソンで発表されたアイディアや成果物について、JAXA側が実際の宇宙探査計画等で利用する際は、製作者・製作チームと個別に対応することとします。 また、本ハッカソンでの成果物の権利については、全てが製作者・製作チームに帰属するものとします。

発表について
成果物の発表は、2日目に各チームごとに10分間のデモンストレーションをしていただく予定です。
※会場備え付けのプロジェクターの利用が可能です

表彰について
・最優秀賞
・JAXA賞
・KLab賞
・敢闘賞
・アイディア賞
※各賞にはそれぞれ賞品等を贈呈いたします
※内容は変更となる可能性がございますのでご了承ください
応募の詳細
応募条件
・学生(高校生以上)、社会人も可
・宇宙に興味がある方、実際に自分の手で宇宙をハックしたい方
・プログラミングやロボット制作、電子工作など、本ハッカソンテーマに自らの手を動かしアプローチできる方(チーム参加可)
応募時に、ハッカソンで取り組む予定の企画概要をエントリーフォームより提示いただき、それをもとに審査と抽選により参加者を決定させていただきます。 チーム参加をご希望の場合は、あらかじめチームを作り、チーム参加を明示してご応募ください。チーム人数は最大5人までとします。 尚、1人での参加の方は、特に運営でチーム編成などは行いません(会場で気の合った皆さま同士でチームになるのは問題ありません)。 また、参加予定人数は、会場の関係から20人程度とさせていただく予定です。
応募される方は、本サイト上部またはこの下にある「Entry」ボタンを押下してください。
応募期間は、2017/10/18(水)~2017/10/30(月)13:00までです。
審査ならびに抽選結果については11/2(木)までに、ご登録いただいたメールアドレス宛にお知らせする予定です。

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お問い合わせ
お問い合わせ先
月探査ハッカソン運営事務局 宛
※参加をご希望の方で、わからないこと等の質問がある方は、上記メールアドレスまでお問い合わせください
※取材申し込み等をご希望の方につきましても、上記メールアドレス宛にその旨をご連絡ください
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