メインテーマ
月-地球での、ロボットの高精度遠隔操縦の実現
月-地球間では、往復でおよそ2.4秒ほどの通信の遅延が発生します。また、通信速度も例えば「かぐや」では10Mbps程度となり、大きく制約されます。もちろん、CPU・メモリなどのコンピュータ資源も大きく制約されます。本ハッカソンでは、そういったミニマムな条件下でロボットを地球から遠隔操縦して、月探査を行うためのアイディアとそのプロトタイプ実装を目指します。
サブテーマ
・通信の制約された中での遠隔操縦用VR(Virtual Reality:仮想現実)環境の構築と管理
※遅延にどう対応するかと、その際のデータ量をどう削減するかが大きな課題となると考えています。そのため以下のようなアプローチがあるのではないかと考えています。
・VR用の周辺環境3Dモデルのセンシング、マッピング
・周辺環境データの通信データ構造
・ゲームエンジンの活用
参考となる技術:360度カメラ、Kinnect、Tango、VR関連、データ圧縮アルゴリズム、ストリーミングプロトコル、3Dモデル圧縮など
・ロボットの自律性強化
※月での実地での試行錯誤を行うことはできません。そのため、簡単に使えるシミュレーション環境が必要となってきます。シミュレータでは以下のようなことができるとよいと考えています。
・月面作業シミュレータの構築や、ネットワークを介してのテスト
・協働作業によるロボットのテストや操縦データの集積とそれによる学習
・ネットワークゲーム技術の応用
参考となる技術:Gazebo、ROS、物理シミュレーション、オンラインゲームの通信、機械学習・AIなど
参加者は以上の課題のいずれか、または独自に考えた課題に対して、チーム・個人で取り組んでいただきます。実際に自分が月探査を計画するとしたらどういったことを考える必要があるか?科学的想像力を発揮してシナリオとその課題を考え、技術的な課題の解決に挑戦してみましょう。
制作物の例
・周辺環境の3Dモデルなどを高遅延低帯域ネットワークで送る圧縮方法やプロトコルの実装
・周辺環境の3Dモデルのセンシングやマッピング技術の開発
・ロボットソフトウェアや遠隔操縦ロボットのシミュレーターなどのゲームエンジン連携やネットワーク化
・操縦データの学習の仕組み開発
・月面探査のシミュレーションや制御、チェックのネットワーク上協働環境の開発(ネットワークゲーム技術の応用など)
課題の背景
月の縦孔とは?
月の縦孔は、2009年に日本の月探査機SELENE「かぐや」の月面観測データにより、 日本人が人類史上初めて発見した孔です。 縦孔は、直径・深さともに数10m~100mに及ぶ巨大なもので、現在3つが確認されています。
縦孔の底には広い地下空洞があり、また横孔が続いている可能性も示唆されています。 この縦孔内部は、放射線や隕石から守られ、且つ温度が安定するため、今後人類が月面基地の建設を行う際の有望な候補地と考えられています。 さらに、月の地質学的な探査や、月の歴史や成因を探るためなど、科学的にも高い関心を持たれています。
そのために、縦孔の詳細を探る科学探査が重要となってきます。
ハッカソンとは?
ハッカソンはもともと、オープンソースプロジェクトなどの課題解決の目的で、開発者が集まり集中的に作業するイベントから始まりました。 その歴史にならい、本ハッカソンでも月面の縦孔探査という先進的プロジェクトの実現のため、その一部分の技術的課題の解決に取り組んでいきます。
なぜゲーム?
現在ゲーム開発技術は、ソフトウェア・ハードウェア両面の様々な先端技術が、UnityやUnrealEngineなどのゲームエンジンを中心に統合され、医療や建築、教育など、ゲーム以外の分野にも応用されつつあります。 また、リアルタイムの対戦を支えるネットワーク技術やデータの処理・分析技術、AIやバーチャルリアリティなど、広い分野の技術が惜しみなく投入される、技術的に非常に活発な分野でもあります。
今回のテーマである「遠隔操作ロボット」は、上記のゲーム開発技術が活用できそうな対象でもあると考え、今回のハッカソンを企画しました。